「良い天気だね」
「そうですね」
「日差しはうららかだし、風もそれほど無いし、過ごしやすい気温だし」
「そうですね」
「お昼ご飯持ってきてたら良かったな、皆を呼んでピクニックとかできるし。きっと賑やかで楽しいよ」
「そうですね」
「……ごめん」
「謝られるくらいなら呑気なお言葉を程々に、現在の状況を正しく認識なさいませ」
「ええと、前後から複数の魔物に挟み撃ちにされている、結構危険かもしれない状況?」
「……」
「そう怒らなくとも。僕だってここが巣窟だと知ってて足を踏み入れたわけじゃないんだから……」
「怒ってなどおりません、毎度の運の悪さと相変わらずな貴方様の調子に呆れているだけです。とにかくお下がりくださいませ、すぐに片付けますので」
「君一人にこの数を相手取らせるわけにはいかない。僕も戦うよ」
「なりません、お下がりください。貴方様は皇太子。私は皇太子付きの護衛官。貴方様の剣となり盾となり、命に換えても貴方様をお守りするのが私の役目なのですから」
「そう言うと思った。でもね、君が皇太子のために命をかけてくれるのなら尚更、僕は僕の力で君を守りたい。そんなに下がれ下がれと警告されるほど僕は弱いかな? 役に立たない、足手纏いかな?」
「……また、そのような意地の悪いことを」
「褒め言葉として受け取っておくよ。さて、どの子から相手してあげようかな。一番端の子なんか手応えありそうだよね」
「悠長なことを仰っている場合ですか。……来ますよ」

 得物を握り直しながら、一瞬だけ背を重ねる。その一瞬で緊張と恐怖と、安心と信頼とを分かち合う。二人で臨む戦いの前には必ず行う一種の儀式、まじないのようなもの。

「――僕の背中を預けるよ、セリーヌ。次に振り返る時はお互い笑顔で、ね?」
「承知致しました。それでは私の背も宜しくお願い致します、ダイ様」

 そして地を蹴りあげる。ただ、前のみを見つめて。
 終わるまでは振り向かない。振り向く必要がない。


<The Second Prince:Die Griffith Sin Hellground

<The guard:
Serene




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