【 Dopo il finale 】
以上、当劇場の支配人による結びのご挨拶でございました。
……いや、これだから困るんですよね。雀の涙ほどの給金で私を働かせ倒して自分は高みの見物、どう考えても労働環境が悪すぎるでしょ? だから辞めてやろうと何度も思ってるんですけど、そうすると「ああいうこと」を言ってくるんですよ。卑怯ですよね。まったく嫌になってしまいます。
それで多少なりともモチベーションが上がっちゃうから憎らしい限りです。もともとが従僕体質なんですかね……認めたくはないんですが。どうやらうちのボスは私にとっても理解者――というより、絶対的な支配者として君臨しているのは確かなようです。
さて、「揺るがぬ信頼を置かれた」社畜は社畜らしく、仕事を完遂することにしましょう。
さあ皆様、両手を前に出していただけますか。
ああ、そんな青ざめた表情をなさらなくても! 大丈夫、私もこの仕事に就いて長いですし、もう数えきれないほどの回数をこなしてますのでご安心ください。それに相棒の切れ味はいつでも抜群の状態であるよう心がけてます。皆様のご負担にならないよう、十本すべて、肉も骨も神経もスパッと一太刀でいくように致しますよ。
おやおや、そちらの方。困りますね、どうしてそんな怯えた顔で逃げようとするんです?
支配人も申していたでしょう、「代金は一銭たりとも頂戴致しない」、「公演料として別のものを頂く」と。演目がタダではないのは承知の上でご覧になっていたのですよね? 確かにちょっと変わった観劇料だとは思いますけど、これが当劇場のルールですしね。
まあこんなこともあろうかと、皆様全員から「お支払い」いただくまではすべての出入り口を閉扉しておりますので。皆様、ご自分の番になるまでどうぞ気楽に、リラックスしてお待ちください。
逃がしませんよ。
当劇場の支配人補佐のプライドにかけて、何人たりとも、一人たりとも――ね。
<] あなたの指を、狙っている。>
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Ingresso (全ての「支払い」が済み次第、入口へ戻ります)
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