【 Intervallo  I → II 】


 以上、当劇場の支配人による前置きでございました。
 改めましてこんばんは。私は支配人補佐とは名ばかりの、実質雑用係(したっぱ)をやっている者です。そんな微妙な空気を作って生温かい目で眺めないでください、自分で言ってる時点で既に悲しさ極まれりなんですから。
 前置き、意味深長ぶった似非も甚だしいことばっかりの内容で退屈されませんでした? 聞き慣れていることを差っ引いても私は退屈も退屈で、袖幕で大欠伸をぶちかましておりました。まあ所詮はガキんちょが精一杯背伸びしてくどくど話してるだけの戯言に過ぎませんから、もう聞いた側から受け流しまくって気にしないに尽きます。
 あ、この暴言、支配人には内緒にしておいてくださいよ? ……はい、内緒も何も筒抜けだとは思いますけど、それはそれ、これはこれ、ってヤツです。


 ここで、一応当劇場について相当簡単にご説明致します。雑用係ですからね、こういったアナウンスから何から面倒な仕事全てを一挙に引き受けているんですよ……人使いが荒いったらありゃしない。


 まず、飲食はお控えください、なんて味気ないことをお願いするなどもっての外。どなた様もお好きなお食事お飲み物に舌鼓を打ちながらご覧いただけます。
 ですが先程支配人も申しておりました通り、演目を「見なければならない」必要はどこにもありません。お気の向くままに立ち去られるも良し、途中からお入りいただくも良し、です。端的に表すなら「来る者拒まず去る者追わず」、ってことですね。一度お帰りになった方の再入場も大歓迎致しております。
 特に休憩時間は設けておりませんので、一服されたい場合などは各自でお休みください。
 大騒ぎされたり飛び跳ねられたりするのは流石にご遠慮いただきたいですが、演目を阻害しない、他人様にご迷惑をかけない範囲であればお喋りも移動も特に制限致しません。
 当劇場は全席が自由席となっております。お座りになる位置でお代が変わることは一切ありませんので、空いている席への変更もお気軽にどうぞ。もしも他の方とぶつかった場合は……そうですねー、ジャンケンという古典的で穏やかなる決闘で決めるのはどうですか。ほら、「運も実力の内」、って言うでしょう?


 えー、説明と言えどこれくらいですかね。「説明なんてあったもんじゃない」「緩すぎるのでは」と無言のお叱りの声が聞こえてくるようです。私も常々そう思ってはいるんですが、当劇場は今までもこうやって上演してきましたし、これからもこうやって上演していくんでしょう。何せ……おっと、ここから先は企業秘密です。ご勘弁ください、ただでさえ薄給なのにこれ以上減俸になったらいよいよ食べていけなくなってしまいます。
 兎にも角にも、今宵皆様がここに辿り着かれたのは巡り廻った何かのご縁。どうぞ最後まで当劇場で流れる時間を満喫していただければ、雑用係もとい支配人補佐としても嬉しい限りです。


 ではいよいよ、演目の幕を上げさせていただきます。
 次の私の出番は全ての幕が下りた後――また皆様とお顔を合わせられますこと、心より楽しみにしています!





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